サブプライム金融危機と中小業者の明日
-新春のつどい-記念講演を聴いて
「サブプライム金融危機と中小業者の明日」と題して、静岡大学人文学部の鳥畑与一教授の講演がありました。当日、当方の準備不足でプロジェクターが使用できないというハプニングがありましたが、プロジェクターと同じ資料が配布されていたので、鳥畑先生のご協力と熱意あふれる講演で無事進行することができました。
講演の内容は、ここ最近の米国発の「サブプライ金融危機」がどのように米国の実体経済および日本経済に影響を与え、私たちの商売にもどれだけの悪影響を与えるのか。このような事態を引き起こしたカジノ資本主義とは一体何か、これをどのようにとらえたらよいのか、などを具体的に図やグラフを使い分かりやすく説明していただきました。
数字があまりにも大きすぎて実感がわかないという声もありましたが、まさに未曾有(ミゾウと読みます。念のため)の金融危機、経済危機に世界が突入しつつあることは理解できました。会員さんからは、「おれは全部わかったよ」「チョー格差の世界に怒りがわいたね」という感想も聞かれ、デタラメなカジノ資本主義の仕組みに参加者は怒り心頭でした。
民間格付け会社の勝手な「格付け」を悪用して、「クズ肉」を「高級肉」に偽装する債券市場価格の仕組みなどは、米国の金融に携わるすべての機関が共犯者といっても過言ではないでしょう。また、はじめから支払い能力のない低所得者層に住宅ローンを貸し込み、その債権を証券化し住宅バブルが膨張し弾けるまでの間に生まれた利益を強奪する。一例をあげると破綻したリーマンブラザーズの会長の報酬は、なんと過去五年間で約二億万ドル(日本円で約二〇〇億円)、1年間で四〇億円、1ヶ月で三億三千万円、1日で千百万円の金額(ウーン声がでない)。
この正当性のない報酬は、「まさに略奪した利益です」と鳥畑教授は「略奪」という言葉を使って米国の金融システムの悪辣さを随所で指摘します。鳥畑先生は、『略奪的金融の暴走』(学習の友社)と題した本を二月初旬に上梓されますので是非ご購読下さい。
現在の危機を考えるポイントは、まず「金融」と「実体経済」を区別することです。両者は全く別物ではありませんが「金融・経済」と一緒くたにすると整理がつきません。本来、銀行などは「信用を創造する」という経済にとっては大事な公共性をもつ社会性のある機関です。そもそも金融は実体経済にとっては、「控え目な支援者」であったのですが、いつの間にか途方もない暴走を始め誰も止めることができずに自爆をしてしましました。
なぜか。(これだ、というスッキリした経済原理的な答えはありませんが、貨幣を生み経済を営んできた人間が、逆に貨幣資本に身も心も支配されてきたためではないでしょうか。マルクスはこれを物象化と呼びました。)
金融といっても銀行と投資(投機)を行う証券は、そもそも役割が違っているのです。過去には一九二九年の「世界大恐慌」のあと米国は、教訓として「金融」と「証券」を分離(グラス・スティーガル法)する政策をとりました。しかし金融の自由化で、なし崩し的に銀行資本と架空資本投機世界がまた太いパイプで結合して行きます。貨幣資本の暴走は、証券だけでは成り立ちません。元手を提供する商業銀行が支えてこそグロールな投機が可能になったのです。
また株式会社は誰のためにあるのかという問いかけに、「会社は株主のものである。ゆえになにはともあれ配当金をだすことが会社の使命である」というホリエモン的風潮が世界的にもはびこっていました。
金融工学とは、名前はエラソーですがなんのことはない、いわばテレビゲームのバーチャル(仮想)の世界と同じです。映画のCG(コンピューター・グラフィック)とも似ています。実がありません。もともとは実体(現実)に即して作られたのですが、限りない人間の好奇心・欲望を満たすため、次つぎにあの手この手で仮想の数字を膨らませてきました。その結果、最後のババが引かれ架空の金融市場は風船のごとく急速にしぼんできたのです。問題は、その失敗したつけが実体経済にも大きく傷をつけてしまうことです。
米国は大統領がオバマになりましたが、油断はできません。なぜなら大統領が自らの国益を最優先することに変わりはありません。保護貿易策を打ち出し、一方、日本の1500兆円もの個人資産を使って米国の傷を修復しようと虎視眈眈と狙っております。(あなた、どうせおれは預金がないから関係ないと思わないでくださいね)
いずれにせよこの先、社会や経済が大きく変化し国民の価値観も変わっていく(これをパラダイム論といいます)のは予測できますが、どのように変化するかはまったくわかりません。いま私たちに言えることは、「百年に一度の危機に対しては百年に一度の闘い」で応えること、そして共に助け合い暮らしと営業は断固守ろう、という連帯感だけは実(身)をもって感じとることができます。 (外苑支部 S.M)
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